テツ男社長のたわごと
「おおぞら」の世代交代
9月にJR北海道は、2022年春のダイヤ見直しについて発表しました。その中で釧路と札幌の間を6往復している特急「おおぞら」の話題も出ました。現在、先輩格の気動車283系3往復、261系3往復で運転していますが、そのすべてを後輩の261系に置き換え携帯電話充電コナー設置、車いすスペースの拡大など車内設備の向上を図ります。
振り子式によりスピードアップに貢献した283系が「おおぞら」から引退するということで、時代の流れを感じました。
簡単に「おおぞら」の歴史を振り返ります。1962年10月1日から釧路~函館で特急「おおぞら」が運行されたのが始まりです。最初の車両は82系。登場時は6両編成で、食堂車も連結されていました。まだ石勝線開通前で、函館行は、釧路から根室本線を西へ進み帯広、富良野を経由して滝川、そして函館本線を通り札幌へ。ここから進行方向を変えて千歳線、室蘭本線、函館本線を経て函館でした。
1972年3月15日のダイヤ改正で特急「おおぞら」は釧路と函館を結ぶ3往復体制となりました。運行時間は、釧路~函館は10時間前後、釧路~札幌は6時間を少し切れたくらいでした。
北海道の気動車特急はすべて82系でしたが、厳しい北海道の環境では車両の痛みも激しく、次世代の車両が待たれました。そこで登場したのが、183系です。エンジンのパワーをアップして、座席も改良して座り心地をよくしました。ただ・・・食堂車がなくなり、代わりの売店が設置されました。
1979年10月7日早朝、ディーゼル機関車DD51に引かれてピカピカの新車が釧路機関区(当時)に到着しました。183系試作車3両です。特急色のクリームと赤のツートンは変わりませんでしたが、何といっても先頭車両の角ばった「スラントノイズ」が目を引きました。新車登場を待ちわびていた半面、鉄道ファンのきっかけとなった82系が置き換わるというので、一抹の寂しさを感じました。
183系試作車3両は、根室本線の西側で試運転を繰り返しました。そして、1980年2月11日から特急「おおぞら」に隔日で投入され、本番に備えました。
1980年3月号の「交通公社の北海道時刻表」を見ると、「おおぞら」4、5号の編成図は、従来の82系とともに〝隔日運用〟と断りを入れて「新形式」として183系の編成も記載されています。
1981年10月1日、札幌方面と「ひがし北海道」をショートカットする石勝線が開業しました。この時の特急「おおぞら」は10編成という長大編成でした。釧路~札幌の所要時間は3往復(6本)中、183系を使った1本だけが4時間59分と5時間の壁を切りました。
1987年4月、分割・民営化で国鉄が解体し、JR北海道などが発足しました。札幌を拠点する道内各都市と結ぶ特急のスピードアップ、居住性の向上がいっそう求められ、振り子式の新型特急281系がまず、札幌と函館を結ぶ特急「北斗」に導入されました。
そして満を持して釧路用として振り子式283系がやってきました。振り子式は、カーブの手前から徐々に車体を傾斜させ、高速でも安全に曲線を通過できるシステムのことで、小型で力強いディーゼルエンジンを搭載し、車体の軽量化を図り、重心の低いさも相まって、最高速度130㌔を実現しました。
1997年3月22日のダイヤ改正から283系は本格デビューし、釧路と札幌の間を最速3時間40分で走り抜けました。その際、汽車いや記者だった私は、一番列車に乗車して札幌まで行き、その模様が新聞掲載されました。
韋駄天(いだてん)走りの283系が、来春に釧路から去るのはとても残念です。来年2022年は、特急「おおぞら」が誕生して60年、還暦を迎えます。その年に、振り子の機能は取りやめたものの、強力なエンジンで振り子式とほぼ変わらない時間で釧路と札幌と結ぶ261系に置き換わるのは、何かの縁なのでしょうね。来年の10月、赤いちゃんちゃんこを着た261系が登場するとうれしいなあ。
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