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津波警報 釧根管内、住民避難 交通機関に影響も【釧路市】

 30日午前8時25分ごろ、ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする、マグニチュード8・7と推定される地震が発生し、釧路、根室管内では最大80㌢(根室市)の津波を観測した。午後6時現在同管内全域に津波警報が発令されており、各自治体で避難所の開設や避難者受け入れなどの対応が続いている。
 釧路町では、セチリ太地区と昆布森地区の全域5642世帯1万1083人に避難指示が出され、午後1時30分までに1067人が避難タワーや学校などに避難した。いづみ公園内の避難タワーには、午前9時半すぎから防災バッグなどを背負った住民らが続々と訪れ、町内会の自主防災組織の指示で、体力のある若い人やペット連れは屋上へ、高齢者や車いす利用者らは下層階に身を寄せた。通所型障害者施設の職員は10人ほどの利用者を引率して避難し「タワーがあって良かった」と話していた。
 浜中町では、霧多布地区など沿岸の1352世帯2763人に避難指示が出され、正午までに24カ所に1027人が避難した。午後1時11分に60㌢の津波が確認された霧多布港を望む町役場には、同4時現在174人が避難している。船を陸に揚げてから午前10時ごろに家族と避難した男性漁業者は「きょうは役場に泊まるしかない」と話した。
 厚岸町では湖南・湖北の沿岸約3400世帯6600人に避難指示が出され、高台にある防災道の駅厚岸グルメパークなどに561人(午後2時現在)が避難。友好都市交流事業で29日に来町している山形県村山市の小学生は、この日予定していたカヌー体験が中止になった。
 避難先は内陸の自治体にも及んだほか、内陸部から自宅のある沿岸部に戻ろうとした住民が、足止めを食らった。
 鶴居村では村総合センターと下幌呂コミュニティセンターを一時待機場所として開放。総合センターは午後5時ごろをピークに40人ほど集まっていたが、約30分後には約20人に減った。下幌呂コミセンは同3時ごろの約30人がピークで、同5時には5人ほどとなった。このほか、駐車場に止めた自家用車で待機する人もいたという。
 標茶町は一時待機場所を用意していないが、厚岸町や釧路町にほど近い茶安別農村環境改善センターや阿歴内公民館に自主避難してきた人が数人いたという。
 白糠町は午前9時40分ごろに避難指示を発令し、白糠・西庶路避難タワーを稼働。役場や学校、高台などの各避難所21カ所に約1700人が避難した(午後0時40分現在)。町によると交通混雑やけが人、体調不良はいない。
 別海町では、沿岸部の尾岱沼、本別海、床丹、走古丹地区の782世帯2103人に避難指示が出た。町内には6カ所の避難所を開設され、午前11時ごろには約200人が身を寄せた。避難所となった尾岱沼地域センターでは、昼食に非常食のドライカレーと味噌汁が提供された。
 標津町でも沿岸部の標津市街、薫別、崎無異、虫類地区など約1500世帯3000人に避難指示が出た。町内11カ所の緊急避難場所には午前11時ごろまでに約190人が避難。ベキシリ山の陸上自衛隊標津分屯地も避難場所として開放し、体育館では毛布と飲み物が配られた。
 標高11・4㍍の望ケ丘森林公園では、住民が次々と避難し、町職員が車の誘導を行った。公園のふもとから歩いて避難してきた80代の女性は「仕事に出ている家族が心配。十勝沖地震で夜中に避難した時を思い出す。何ごともなければいいが」と、不安げに眼下のまちを見守っていた。町は同日午後5時から、町生涯学習センターあすぱるに避難所を開設した。
 町全体が沿岸部に当たる羅臼町は町内全域2062世帯、4684人に避難指示。19カ所に避難所を開設し、午後3時30分時点で251人が避難した。正午ごろ、町民体育館らうすぽでは、近くの保育園などから16人が避難していた。保育士の女性は「毎月避難訓練を行っていた。一時避難し、保護者に迎えに来てもらう予定が、迎えに来られない想定はしていなかった。昼食も緊急用のお菓子しか用意しておらず、園児たちのストレスがとにかく心配」と不安を漏らした。
 公共交通機関の運休は、利用者、特に、観光客やビジネス客の旅程を大いに狂わせた。JR釧路駅には、「津波警報発令中 駅舎閉鎖中」の張り紙が貼られた。釧路駅前バスターミナルも午後0時30分過ぎ、回送車も含めてバスが1台もいなくなった。
 東京から家族で来釧し、特急「おおぞら」で、新千歳空港に向かう予定だった60代の主婦は「張り紙一枚で門前払い。大変なのは理解できるが、駅員から直接、話を聞きたかった」と肩を落とした。札幌から出張で来たという30代男性会社員は「タクシーで釧路空港まで行くべきか思案中。とりあえず延泊できるか交渉する」と語り、きびすを返した。
(五味亜希子、水谷友路、長谷紅瑠美、鉾之原頌吾、橋本梓)

[写真/避難者用の毛布を運ぶ職員(30日午後4時30分ごろ、浜中町役場庁舎)]

[写真/避難タワーの屋上に避難する住民(30日午前10時50分ごろ、釧路町いづみ公園)]

[写真/多くの住民が身を寄せた陸上自衛隊標津分屯地(30日、午前11時40分ごろ)]

[写真/避難所で非常食の昼食をとる住民(別海町尾岱沼地域センター、午後0時50分ごろ)]


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