テツ男社長のたわごと

国鉄の香り残るキハ40

 JR北海道は来春のダイヤ見直しで、根室本線の釧路~新得で運用されている気動車キハ40を、すべて新車のH100電気式気動車に置き換えることを発表しました。
 キハ40は国鉄時代末期に新製された気動車で、釧路機関区(当時)には1979年、ディーゼル機関車DD51に引かれて配置されました。この時の車体は、朱色一色でした。

新車のキハ40がDD51に引かれて釧路へやってきました(1979年9月6日 新富士で撮影)
新車のキハ40がDD51に引かれて釧路へやってきました(1979年9月6日 新富士で撮影)

 先日、釧路から池田までキハ40に乗りました。乗車した普通列車は2両編成で、先頭車両はJR北海道色、2両目は今年春にお目見えした一般色と言われるオレンジ色とクリーム色のツートンでした。
 釧路を出るとしばらく平坦ですが、白糠を出発して大きく右に曲がると登り勾配に差し掛かかります。エンジンをふかしますが、徐々に速度は落ちていきます。特急型のキハ283系や261系は軽く越えられる勾配でも非力なキハ40はあえぎます。全身エンジンのように身を震わせる姿は、まるでSLのようです。古瀬信号場で力行をやめて惰行のまま古瀬トンネルに入ります。
今回は、初めて「音鉄」を披露します。白糠から古瀬トンネルを出るまで頑張るキハ40を想像してください。

 古瀬トンネルを出ると坂を下り、馬主来(ぱしくる)沼が左に広がります。列車は、日光の戦場ヶ原のような荒涼とした湿地帯を無造作に駆け抜けます。そして国道38号線をくぐると右に大きく曲がり太平洋に沿って音別をめざします。

馬主来湖を左に見ながら湿地帯を抜け海岸線に沿って進みます(古瀬~音別)

 十勝に入り、厚内を出発すると長い登り坂が続き、キハ40はふかし続けます。分水嶺のトンネルを抜けて坂を下ると大きな市街地が見えてきて浦幌。続いて新吉野、そして豊頃に停車します。豊頃では下り特急おおぞらと交換するため5分ほど2番線で待ちます。1番線の列車接近を知らせる警報機が鳴ると、キハ261系おおぞらが轟音とともに通過していきます。
 鉄道趣味にはいろいろあります。撮り鉄、音鉄、時刻表鉄、乗り鉄、模型鉄など・・・。テレビを見ていたら反射鉄という新たなジャンルがあることを知りました。全面ガラスのようなビルの脇を通る際に、自分が乗っている列車が映り、それを楽しむそうです。大都市だけの話と思っていましが、身近にありました。何と、通過している特急おおぞらの側面に私が乗っているキハ40が映りこんでいるではありませんか。

豊頃で下り特急おおぞらと交換すると側面にキハ40の姿が

 このあとキハ40は山すそを縫うように走り、ワインで有名な池田に到着しました。ここでは上り特急おおぞらに道を譲るため、約26分2番ホームで待機します。

池田で上り特急おおぞらに道を譲るため静かに待つキハ40
池田で上り特急おおぞらに道を譲るため静かに待つキハ40

 勝手な言い分ですが、列車の旅は4人向かい合わせの〝直角〟椅子(クロスシート)でなければいけません。都会の電車のような窓に背を向けるロングシートでは〝汽車旅〟の気分が出ません。
 キハ40は、登場当時から一部を除いてクロスシートをかたくなに守っています。しかも、青色のシートが、おじさん世代には何ともたまりません。私が国鉄に入社した翌年にキハ40が登場しましたが、ついに新型車両にバトンを渡す時がきました。国鉄の香りが残り、また、40年以上〝付き合ってきた〟車両がいなくなるのは残念ですね。時代の流れを感じます。


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